知っていることで、また、意識することで、その“学び”の効果が倍増する2つの理論、「7・2・1の法則」と「コルブの経験学習モデル」について、ご紹介させていただく内容で、前回の①では「7・2・1の法則」を説明させていただきました。今回は「コルブの経験学習モデル」を取り上げます。
私自身がこの2つの理論に明確に触れたきっかけは「ヤフーの1on1」という本だということは、前回も触れましたが、今回の「経験学習モデル」を実践的に取り入れる手法として「1on1」が説明されています。
コルブの経験学習モデル
前回、7・2・1の法則で、「経験から学ぶ」が7割を占めるということを知りました。
今回の「コルブの経験学習モデル」としては、その人材育成に最も影響を及ぼす「経験から学ぶ=経験学習」について、ディビッド・コルブが提唱した学習理論であり、それが「経験学習サイクル」です。
その内容がこちら。人は経験から学ぶ際、この4工程のサイクルを繰り返しているという内容です。
このサイクルや、4工程それぞれの内容を意識することによって、より学びが促進されることになりますので、まずは、4つの工程それぞれについて触れたいと思います。
具体的経験 Concrete Experience
はじめは「具体的経験」で、わかりやすいと思います。まずは経験すること。そこからサイクルはスタートします。
ここで大切なことは、「“新しい経験”を意識する」ことです。
新しいプロジェクトを任された。新しい企画を立ち上げた。などの、わかりやすい“新しい経験”があるならば持って来いですが、そんな機会に恵まれることは少ないと思います。
そんなときのための考え方として、私たちは日々、何らかの業務を経験しているわけですが、その中で何か“新しいこと”がないかを探してみましょう。
新しい人、新しい結果、新しい手法、新しい数字…。小さいことでも何か気付きになるような新しい経験であることを認識することができることに出会えば、経験学習サイクルの1stステップとなり得ます。
省察的観察 Reflective Observation
次に、省察的観察です。「省察的観察」とわかりにくいですが、「内省」すること、つまりは「振り返り」です。
先ほどの具体的経験で行った行動や、その時にどう考えたかという思考についてもしっかりと観察することが大切です。
特に、日本のビジネスパーソンは、この内省が苦手とされています。行動を振り返ることはできるのですが、苦手とされているのは「思考の振り返り」です。
日本のビジネスパーソンは、日々の業務や研修などで、素早く結論を言ったり、意見を簡潔にまとめる訓練をなされることが多く、割と得意とされる人は多いです。
一方、出来事を振り返り、そのプロセスを語る、そのときにどんなことを考えていたかを説明することのように、「私」を主語にして語ることは、自己主張を苦手とする日本人には苦手なことである、ということです。
そのため、自分で内省すること苦手ならば、他者から意見をもらう、という行為がいおすすめです。
この理論が提唱されたときは、第3者の視点をもって、自分自身で振り返ることとしていましたが、実際の第3者からフィードバックをもらうことも推奨されています。
概念化 Abstract Conceptualization
3つ目は概念化として、「教訓を引き出す」というプロセスになります。
先ほどの省察的観察で、内省・振り返りを実施して得られた、よかった点、悪かった点などの気づきを、ほかの場面にも応用して適用できるように概念化・一般化します。
つまり、“自分自身の教訓”という形に引き出すことが、このステップで求められています。
実践 Active Experimentation
4つ目は実践です。先ほどの概念化で得られた、新しい“教訓”を実践の場で試してみるというプロセスです。
理論は実践して初めて意味があります。机上の空論では、その理論が本当に役に立つのかはわかりません。
この実践のプロセスにより、また「具体的経験」が得られることから、サイクルをまた回すことができ、スパイラルアップしながら成長できるのです。
PDCAサイクルと似ている
以上、4つのサイクルを見てきていかがでしょう。
PDCAサイクルと似ているなぁと感じた方もいるかもしれません。
サイクルを回し、スパイラルアップを目指すということで、PDCAサイクルと非常に似たような性質を持ちます。
違う点はPDCAの「C:Check」が「省察的観察」と「概念化」の2つに分かれているところと「P:Plan」が省かれているところでしょうか。
学びを得るということで「C:Check」に該当する「省察的観察」と「概念化」の2つのプロセスが大事であるということの表れではないでしょうか。
Planが省かれていますが、経験学習サイクルでは、実践することに焦点を当てているだけですので、
いざ本当に業務を遂行する際に、Planは必要だと思いますので、決してないがしろにしてよいという意味ではないことはご注意ください。
上司ー部下の関係で“コルブの経験学習モデル”を応用
初めにも紹介しましたが、私自身がこの理論を知ったのは、「1on1」という上司ー部下間で実践する、1つのコミュニケーション技法が紹介された本です。
その本では、「1on1」は、前回の「7・2・1の法則」と「コルブの経験学習モデル」を行い、社員(部下)を成長させるステップとして優れているということが書かれています。
上述しましたが、社員が自分から新しい「具体的経験」を得ようとしてもなかなかそのチャンスに巡り合うことはできません。
そのため、やり方を工夫するなどを試みることとしていましたが、上司の立場からみると、新しいタスクを振ること自体はそれほど難しいことではないと思います。
当然、新しい仕事を与えることで、教える手間や失敗したリスクが上司にはついてしまうため、その点では簡単ではないと思いますが、部下を成長させるのが上司としての責務と考える会社では、むしろ積極的に実施すべきではないでしょうか。
「省察的観察」では、日本のビジネスマンは、自分を主語にして語るのが苦手であることが多いため、その気づきを得られる手助けをし、「概念化」まで結び付け、また「実践」という形です。
初めにも記載したように、この1on1については、また触れたいと思います。
今回と前回の2回は、“仕事の学び”を促進させる理論をご紹介させていただきました。
日々の仕事で、いまどの段階にいるのかを意識することで、学びの効果は跳ね上がります。
以上、参考にしていただけると嬉しいです。
それでは。
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